東京都

テーマとビジョン

◎ 公教育投資(供給者サイド)/ 教員のコーチング

教師が変わることによって、子どもたちは変わる。知識ではなく、対話によって未来をつくる力を育む。いまこそ、公教育の教員すべてにコーチングの力を――その意義を、教育政策の中心に据える時。

◎ ブロードリスニング

声なき多数の意見を可視化し政策に反映できる新たな手法。本質は、広範・無作為な声を科学的に扱い、継続的に政策につなげるという「しくみ」の構築にある。信頼され実効力ある政治の実現に不可欠。

◎ Station Fからのヒラメキ - 地方スタートアップのイノベーション拠点を東京に

◎ 農業・漁業

 

Station Fと多極分散の可能性

◆ 世界最大のスタートアップ・キャンパス「Station F」から学ぶ、東京型イノベーション拠点の可能性

東京都におけるスタートアップ支援の次なるステージとして、フランス・パリの「Station F」に代表される都市型イノベーション拠点のモデルに着目しています。Station Fは、世界中の起業家、投資家、大学、企業、自治体が集結する世界最大規模のスタートアップ・キャンパスであり、単なるオフィススペースを超えて、育成・資金調達・技術連携・国際交流を一気通貫で実現する「共創の場」です。⇒見学レポートはこちら

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ブロードリスニングとは

◆ ブロードリスニング(法的観点から)

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《東京都 公教育未来ブリーフィング(案)》

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公教育未来投資プラットフォーム

公教育未来投資プラットフォーム

東京都の公教育投資の充実を目指し、【ブロードリスニング(広範な意見収集)】を活用した政策議論の仕組みを提案します。この仕組みでは、住民、教育現場、専門家が参加し、教育に関する意見やニーズを広く集め、AI技術を使ってその意見を可視化します。収集された声をもとに、政策案を市民と専門家が共同で設計し、優先度を投票で決定します。さらに、議会に提案し、透明性のあるプロセスで政策決定を行います。民意を可視化することで、市民一人ひとりの意見が直接政策に反映される仕組みを実現し、教育政策の民主的で実効性のある改革を推進します。

ブロードリスニングの法制度に関してはこちらをご覧ください。

東京都の公教育「投資」

◆ 東京都の公教育「投資」について

日本の教育は今、少子化、教員不足、教育格差といった複雑な課題に直面している。これらの課題を乗り越えるためには、単なる”無償化”などの需要サイドの施策にとどまらず、教育の質そのものを支える”供給サイド”への戦略的投資が求められている。公教育への供給サイド投資について、以下で都議会議員と国会議員が果たすべき役割と政策の方向性を比較・整理しています。

教育投資とは→教育の供給サイドのこと

  主な内容 政策の例
需要サイド 保護者・児童生徒の支援 授業料無償化、給食費補助、奨学金制度
供給サイド 教育を提供する側への投資 教員の待遇改善、学校設備の高度化、教育内容の質的向上

供給サイド、つまり公教育投資に注目し、都議と国会議員がそれぞれどのような政策を実行できるかを明らかにする。


東京都議会議員の役割と政策

主な権限

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公教育の教員は、もはや「答えを教える人」ではなく、「問いを共に考える人」になるべき時代に突入しています。コーチングは、そのための最も実効的かつ人間的な方法論なのではないでしょうか。

 

これまでの日本の公教育は、知識を効率よく伝えることを重視し、教員は「教える人=ティーチャー」であることが求められてきました。しかし、社会の変化、特に情報化・グローバル化・AI時代の到来により、「何を知っているか」よりも「どう考え、どう学び、どう他者と協働するか」が重視されるようになっています。このような社会においては、公教育における教員の役割も変わらざるを得ないと思われます。今、教員には「教える力」ではなく、「引き出す力=コーチング能力」が求められています。

なぜティーチングよりもコーチングが重要なのか、その理論的背景と実践的意義を明らかにし、公教育における教員の在り方を再定義してみたいと思います。

  1. ティーチングとコーチングの本質的な違い

ティーチング(teaching)とは、既存の知識や技能を体系的に教える行為であり、教師が主導し、生徒が受け身になる構造が基本です。一方、コーチング(coaching)は、対話を通じて相手の内面にある可能性や答えを引き出す手法であり、双方向・共創型の関係を前提とします。

この両者の違いは以下の点に要約できます:

  • ティーチング:教師が「何を教えるか」に焦点/教師が主役/一方向的/目標は知識の習得
  • コーチング:学習者が「どう学ぶか」に焦点/学習者が主役/双方向的/目標は自律的成長

従来型の教育は「正解を与える」ことに重きを置いていましたが、現代においては「正解のない問題」に取り組む力、自ら問いを立て、解決に向けて試行錯誤する力こそが求められています。そのため、教師が一方的に知識を教えるモデルは限界を迎えています。

  1. なぜ公教育にコーチングが必要なのか

2.1 VUCA時代の到来

現代は”VUCA”(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代と言われています。将来の予測が極めて困難で、知識の有効期限が短くなり、唯一の正解が存在しない課題が多くなっているのです。こうした環境下では、単に知識を詰め込む教育では不十分。むしろ、変化に対応し、主体的に学び続ける力、自らの思考を深める力、他者との協働によって新たな価値を創造する力が必要となります。

2.2 学習者中心の教育への転換

これまでの公教育は教師中心の「一斉授業」が主流であった。しかし近年では、個別最適化された学びや探究型学習、プロジェクト型学習(PBL)など、学習者自身が主体となる学習スタイルが求められている。

この転換を支えるのがコーチングです。コーチングによって、生徒は自ら考え、問いを立て、自分のペースで学び、内発的動機づけによって学びを継続できるようになります。

2.3 心理的安全性と自己効力感の醸成

教育心理学では、学びの基盤には「心理的安全性」や「自己効力感」が重要であるとされています。コーチングは対話を通じて、子どもの思考や感情を丁寧に引き出し、「否定されない安心感」を生みます。これは、失敗を恐れずに挑戦する力、自分にはできるという信念を育む基盤となります。

  1. 教員に必要な新たなスキルセット

3.1 傾聴と共感の力

生徒が本音を話し、自らの思考を言語化するには、「聴いてくれる存在」が必要です。コーチングでは、表層的な情報ではなく、その背後にある感情や価値観に耳を傾ける「アクティブリスニング」が求められます。教員がこの技術を持つことで、生徒との信頼関係は深まり、学びはより深いものとなります。

3.2 質問力(クエスチョニング)

良い問いは、生徒の思考を促し、探究心を呼び起こします。単なる正誤を問う質問ではなく、「なぜ?」「どう思う?」「他にどんな見方がある?」といったオープンな問いかけは、深い学びと内省を促します。

3.3 フィードバックと承認のスキル

成績やテストの点数だけではなく、生徒のプロセスや努力を承認することが、やる気の源となります。コーチングでは、「評価」ではなく「フィードバック」を重視し、自分の行動を客観的に捉え直す機会を提供します。

  1. すでに始まっている実践例
  • フィンランドの教育改革では、教師は「指導者」ではなく「ファシリテーター」としての役割を担い、生徒の探究心を支援する立場にあります。
  • 日本の一部の先進校では、コーチングの研修を教員に義務化し、ホームルームや個別面談にコーチング技術を取り入れています。
  • OECDが提唱する”Learning Compass 2030″では、自己調整学習とウェルビーイングが中心となり、教員の役割は「コーチ」と明示されています。
  1. 課題と展望

コーチング型教育への移行には、いくつかの課題もあります。

  • 教員研修の不足:多くの教員はコーチングを学んだことがなく、従来の教え方から脱却するには時間と支援が必要。
  • 制度的支援の欠如:画一的なカリキュラムや評価制度が、個別最適な対話型教育と矛盾していることがあります。
  • 保護者や社会の理解:教員が「教えない」ことへの不安や誤解をなくす必要があります。

それでもなお、未来の教育を担う子どもたちにとって、自ら学び続ける力こそが最大の武器となります。教員が変われば、教育が変わる。そして、社会が変わる。