軌道の分類と制御技術
軌道の分類と制御技術(LEO / MEO / GEO / HEO)
人工衛星は、その運用目的に応じて異なる高度・軌道形状に投入されます。これらの軌道は、地球との距離、観測可能領域、通信遅延、軌道寿命などに大きな影響を及ぼすため、軌道選定と制御技術は宇宙インフラの設計において極めて重要です。
(1) 軌道の主な分類
● LEO(Low Earth Orbit:低軌道)
高度:200~2,000km
地球に近く、観測・通信の遅延が小さいです。
利用例:地球観測衛星(ALOS)、ISS、Starlink衛星群
周回周期:約90~120分。高頻度な観測や通信に適しています。
課題:大気抵抗による減速、寿命が比較的短いことです。
● MEO(Medium Earth Orbit:中軌道)
高度:2,000~35,786km
主にナビゲーション衛星(GPS・みちびきなど)が利用。
地上との通信・観測性能とカバレッジのバランスに優れています。
周回周期:数時間。地球全域への均等な配置が可能。
● GEO(Geostationary Orbit:静止軌道)
高度:約35,786km(赤道上空)
地球の自転と同期し、地上からは常に同じ位置に見えます。
利用例:通信衛星(BS放送、天気予報)、気象衛星(ひまわり)
広範囲を常時監視・通信できるが、遅延や打上げコストが大きいです。
● HEO(Highly Elliptical Orbit:高楕円軌道)
近地点と遠地点に大きな差がある楕円軌道
極域上空に長時間滞在可能で、高緯度地域の観測に有効。
例:ロシアのモルニヤ軌道衛星、天体観測用の一部科学衛星
一定地点での観測時間を延ばす目的で活用されます。
(2) 軌道投入と制御技術
軌道投入はロケットによって決定されるが、微調整や姿勢制御には推進装置・ジャイロ・反応ホイールなどが使用されます。
軌道変更(マヌーバ):人工衛星が軌道上で加減速し、高度や傾斜角を変える技術。燃料効率が設計の鍵。
ステーションキーピング:静止衛星が目標軌道から逸脱しないよう軌道を維持する操作。
スペースデブリ回避:他の衛星やデブリとの衝突を防ぐための軌道変更も日常的に行われます。
用語集
用語 | 解説 |
---|---|
LEO(低軌道) | 地表から近く、観測や低遅延通信に適する。大気抵抗の影響あり。 |
MEO(中軌道) | 主に測位衛星に使われる軌道。広い範囲のカバーに適す。 |
GEO(静止軌道) | 地球と同じ速度で回るため、常時同じ地点を見下ろせる軌道。 |
HEO(高楕円軌道) | 長時間、特定地点(特に高緯度)を観測するための楕円軌道。 |
ステーションキーピング | 軌道上の衛星が定位置を維持するための制御操作。 |
マヌーバ(Manoeuvre) | 軌道変更のための衛星の加減速操作。 |
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